ゴールドコーストに着いて翌朝、私はチームの練習に合流した。
チームメイトが翔子お帰りなさい。会えて嬉しい。とハグで迎えてくれて、
コーチのクレイグも本当に戻ってきてくれて嬉しい。とハグしてくれた。
もうオーストラリアに来てしまったから言えるけど、日本ではトライアスロンを楽しめなくなっていて、
悲しいことが多かった。
前回の渡豪から帰国して以降、精神的に病んでしまい、外出することすら辛くなっていた。
もがき溜め込んでいた悲しみが爆発してしまい、
忘年会、自宅、電車で3回も失神してしまった。
脳の検査や耳の検査を受けるなどした。
正直もうトライアスロンを辞めようと諦めていた。
自分の精神状態、身体の状態含め、もう無理だと感じていた。
どこで働こうか。応援してくれていた皆様に謝罪しなくては。
など考えながら過ごしていた時にクレイグがいつ戻ってくるのか?と連絡をくれた。
私は、今の状況ともうトライアスロンをやめると話した。
すると、
君はまだアスリートとしての価値がある。
僕のもとにまずは戻ってきてトレーニングをしてほしい。
みんな待っている。と言ってくれた。
もう動きたくもない。
トライアスロンなんてもう二度と仕事も選手もしたくない。
そう思いながらも何度も夢に見る、
翔子ちゃんなら絶対にいい選手になるよ。と
少し照れながら言ってくれた昔の私の憧れだったコーチの顔が忘れられなくて、
抜け殻のようになりながら支度してここにたどり着いた。
私はここまでものすごく遠かったように感じていたから、みんなのその言葉だけで泣きそうになったし、
ここに居られることを心の底から安堵した。
居場所無いなら飛び出してしまえ!
言うのは簡単だけれど、臆病な私にとっては本当に大変な一歩だった。
日本であった事をクレイグには一通り話した。
でもトライアスロンがしたい。
そう伝えると、
健康は大丈夫か?と質問された。
その後に特に心の健康。と付け加えられた。
今まで日本で健康を心配してくれたコーチはいなかった。
いかに結果を出すことが大切か。と、いかにトレーニングし続けることが正義か。を言われていた。
なのでその質問に驚いた。
今まで日本にいた私なら大丈夫。と答えていたと思う。
でも私はその時泣きそうになってしまい、
苦しいのでクレイグの助けが必要です。と答えた。
今日はジョグのみにしてゆっくり走るんだ。
ここはもう日本じゃない。
僕の指示をよく聞いて。
と言われ、ジョグに変えた。
ジョグをするのも胸が苦しかった。
体力も確実に衰えているし、身体中の筋肉も内臓も悲鳴を上げているのがわかった。
でも周回コースでクレイグの前を通り過ぎる度に笑顔でほほ笑んでくれていた。
翌日、バイクトレーニングの後に自分でジョグをプラスして行っていた。
日本ではバイクトレーニングの後にブリックランを入れない日はほとんどなかったのに、
それをクレイグに見つかってしまい、ものすごく叱られた。
その日の夜、その行為が好きじゃない。指示に従うか、従えない場合は連絡して交渉すること
を改めてメッセージできつく言われ、翌朝グループでのロングライドに向かった。
ここでもまたトラブルが発生。
山の中でグループから千切れてしまい、見失ってしまった。
完全に迷子になるが、電波もなかった。
ひたすらまっすぐ走って電波があるところに出て、チームメイトに連絡するとかなり違う道を走ってしまっていることが分かった。
37度近い気温があり、フラフラになりながらも自分で調べ、なんとか帰宅した。
するとクレイグから連絡があり、なぜチームとは別で乗ったんだ。と問われた。
私は千切れてしまい道が分からなくなったことを伝えると、
今の君の状態はチームを困惑させている。
身体が出来るまでホームトレーナーでトレーニングするように。
と叱られた。
実際にそうなのだけれど、自分の不甲斐なさと伝えたくてもうまく伝えられない気持ちで悔しくて泣いた。
その夜、親友のりさに相談をした。
りさは私の小学生の頃からの友達で彼女も小学生からトライアスロンをやっていた。
彼女はトライアスロン選手として強くなるために中学卒業後すぐにゴールドコーストへ来てトライアスロンをしていた。
現在は引退し、ゴールドコーストで結婚して、子供もいる。
りさは日本、トライアスロン、ゴールドコースト全ての事を分かってくれる私にとっては一番の理解者である。
彼女に教えてもらったのは
日本では練習に追加でトレーニングしても怒られないけれど、こちらのコーチは勝手な増減を嫌うから。
それはまずかったかもね。
でもそれは日本との文化の違いでもあるから悪気がなかったことは伝えた方が良いよ。
それから、コースが分からなくて迷ってしまうのは私もそうだったから。
それで怒られたことに関しては謝る必要ないし、それなら事前にコースマップ欲しいと伝えた方が良い。
話しても上手くいかなければ、オーストラリアはチームの移籍も普通にあることだし、チームもたくさんあるから気にしすぎないでいいよ。
とアドバイスをもらった。
りさのアドバイス通りにクレイグに伝えると、
今、君のコーチは私であり、ここはオーストラリアだから。
文化の違いや言葉の壁もあるけれど、そうやって伝えあいながらやっていく必要があることを話しされた。
リラックスしてまずは指示通りに行うこと
分からないことややりたいことはまず相談をすること
をアドバイスされて、
何度も言うけれど君は若い。
君は自分の年齢を気にしすぎているし、結果に拘り過ぎて大事なものを見失っている。
まだ絶対に強くなる。速くなる。それは嘘じゃない。
でもその前にトライアスロンを好きでリラックスできていることがすごく大事だ。
自分を大事にして、健康的に怪我無く積み上げることだ。
一気にやろうとしてはいけない。
大丈夫だから。
そう話をされた。
言葉がうまく伝えられなくて悩んでいたけれど、クレイグはよく見ていてくれて、私が言葉にしていない部分まで見透かされていることを感じた。
早速、日本との違いやコミュニケーションでの悩みと壁に当たったけれど、
こうして新たな価値観や文化と出会うことで自分をより理解が出来るし、
日本も客観的に見ることができるのもよく分った。
色んな人に助けてもらったり、ぶつかったり、与えてもらってばかりで不甲斐なさもものすごく感じるけれど、自分が与える側になれるように自分を磨き高めていこうと決意した。
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