ゴールドコーストへ

お知らせ

親元を離れて遠征なんて、中学生の頃から何度も行っていて、

19歳で実家を出たし、

ホームシックや両親のもとに帰りたいと思ったことは一度もなかった。

15歳の頃から既にトライアスロンで親の何倍も異国の地に行かせてもらっている。

でも今回は、紆余曲折を経て、ゴールドコーストで生きていく決断に至った。

本当にこれが正しいのか。これで良かったのか。

不安や恐れが自分の感じていたよりももっと自分の心の中にあるらしく、

初めて、母と離れるのが辛い。と感じた。

プールに行くのが嫌で泣き叫んだ4歳くらいの感覚がふと蘇った。

母親に

幸せになれない場所にいることはない。

寂しい思いはもちろんあるけど、翔子には笑って生きていてほしい。

そう言われ、成田空港まで送り届けてもらった。

自転車とスーツケース、大きなリュックの40kg程度の荷物を車から降ろし、カートに乗せた。

いつも重たくて面倒くさいと感じる遠征も、今回は

私が生きていくのに必要なものってこれだけなんだ。

と、いかに普段自分が必要のないものまで抱えて生きていたかを思い知る。

到着した第3ターミナルの簡易的な内装にショッピングモールみたいと笑ったり、

周りのほとんどがオージーで、みんな格好いいね。脚が長いね。など他愛もない会話をして、

父から送られてくるLINEや祖母からの電話で家族と別れを惜しんだ。

最後、搭乗口に向かう時。

いってらっしゃい。頑張るんだよ。

と母が泣くから、

私もなぜかグッと涙が込み上げてきてしまい、

ありがとう。としか言えなかった。

その後も飛行機に乗るまでの間、ずっと涙が止まらなかった。

寂しさなのか、上手く日本で生きることが出来なかった悔しさなのか…

思えば母には一緒に料理をしたり、買い物したり、旅行したりする時間も持てずに嫁に行き、

ずっと心配と迷惑ばかりかけてきた。

そして今もまた自分の為だけにゴールドコーストにいこうとしている。

私の生き方はなんて不器用でなんでもっとまっすぐ進めなかったのか。

どこで何を間違えてしまったのか。

親孝行出来ているのか。

この5年間はそんな思いが込み上げるたびにそれを振り払うため追い込んで練習していたように思う。

その思いも、この数年の苦しさも全てを置いて、雪交じりの成田から飛び立った。

飛行機に乗っている時間は空間の境界線にいるような不思議な気持ちになる。

今までの自分を振り返り、傷つけた人に心の中でそっと謝ってみたり

許せなかった怒りや悲しみをぐちゃぐちゃに握りしめて捨ててみたり

幸せだった時間を思い返して良い事もそれなりにあるよなと自分の人生を肯定してみたり

自分と向き合いながら過ごす。

いつの間にか眠っていて、目が覚めると少しずつ空が赤くなっていた。

飛行機からエメラルドグリーンに輝いている海が見えた。

朝8時のゴールドコーストに到着して、刺さるような強い日差しを浴びた瞬間、

雪交じりだった日本とは別世界で、ここで生きていくんだなと日本から離れたことを実感した。

どんな毎日になるのか。

誰と出会い、どんな景色が見えるのか。

今回の旅立ちはきっと新しい自分への一歩になる。

いろんな苦難を乗り越えて、どこに居てもそれでも自分を生きることを諦めたくはない。

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